唄三線のある日常。        愛器「二つ星小」          (たーちぶしぐゎー)。         


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三味線店めぐり⑤照喜名三味線店:上巻 6月19日

<妻の異変>

昨夕(6月18日)、ホテルに帰ってから、妻の様子がおかしかった。

明けて19日、妻はいよいよ調子が悪くなり
私は「沖縄の旅はこれで終了か!?」
と思ってしまうまでにひどい状態であった。

「これはつわりに違いないと思う。私は無理だけど
 漆畑さんと出かけてきて良いよ。」
「…本当にそうなのか?」
「沖縄来る前に妊娠検査薬試したから、間違いない」
「…え!?いつの間に?」
「ホテルに残ってもらっても、具合はよくならないし一人で安静にしていたい」

文章で書くと険悪な様子に見えるかも知れませんが、
ぜんぜんそんなことはありませんでした。
私は病院への受診をすすめましたが、妻は「大丈夫」と言います。


で、漆畑さんの宿泊されているペンションへお迎えにあがりました。
今日もまたまた雨です。
妻の事情を話すと
「大丈夫ですか?ホテルに戻ったほうがいいんじゃないですか?
私は一人なら、いつもと同じ調子ですごせますから」
と言ってくださったが、戻っても妻の具合がよくなるわけではないし
私が残るほうが気疲れすると思ったので、お茶やゼリーなど必要なものだけ
ホテルの売店で買ってきて用意して
予定通り三味線店めぐりに出かけることにしました。

この日は確か日曜日でした。
日曜日、営業している三味線店は少ない。
これは前もって漆畑さんから聞いていました。

ここは北部、恩納村。
事前の計画で南部の三味線店に回るというのを
打ち合わせていましたので、どこへ行くか決めずに
とりあえず高速で南へ走ります。
「照喜名三味線店に電話してみましょうか?開いているかは分かりませんが」
と漆畑さんがおっしゃるので、お願いしました。早速電話です。
「…そうですか、夕方から。で、今からなら大丈夫ですか?」

夕方から結婚式に出かけるけど、午前中なら店にいらっしゃるとのことです。
この日の長距離走でも話が弾み、高速を行き過ぎてしまいました。
カーナビで佐敷の住所を呼び出して、一路照喜名三味線店へ向かいます。

<ぬーやるばーがー>

朝食に面白いものを食べました。
与那原のJEFという名のハンバーガーショップ。
「ゴーヤーバーガー食べてみませんか?」という漆畑さんの提案で
入ったお店ですが、私の目におかしな商品の文字が入ってきました。
「ぬーやるバーガー」とあります。
「これ、何ですかね?」
「あ~、ゴーヤーバーガーにポークが入ったやつです。
”ぬーやる”というのは方言です。」
漆畑さんの説明によると
「ぬー」→沖縄方言=「何」→標準語
「やる」→沖縄方言=「~する」→標準語
という感じなんだそうです。
ということは…「何してんだこのバーガー」
という意味でしょうか。

初めて食べましたが、とても美味しいです。
「妻にも食べさせたいです。」
三味線には関係ないですが、こんな時間も楽しかったです。

JEFを出て佐敷へ。
照喜名三味線店に到着です。
佐敷郵便局に車を止めて歩きます。

<照喜名三味線店>

コンクリートのごついベージュの建物。
「照喜名三味線店」とペンキで直書きしてある。
随分年季の入った建物だ。
漆畑さんに続いて店に入る。中は随分暗い。
「おぉ。来たねぇ。」と恰幅の良い年配の方。この方が照喜名三味線店主
照喜名朝福さんだ。見るからに職人という感じ。

初めてのお店に戸惑う私をよそに、漆畑さんが店主とお話を始めています。
私は、店内に陳列された三線やお店の様子を目に焼き付けるので精一杯。
「この三線、初めて見ますね。八重山ですか?」
漆畑さんが店主に聞いています。
「戦争の後によ、切り倒して作った。
ワシが初めて作った三線。今考えると、実は宝物じゃないかと思ってよ」
こんな会話だったと思います。
塗りのされていない、シラタが混じったマーブル模様の三線でした。

糸巻きの話などして、陳列されている三線を見ていると
極端に天の曲がった三線が。「これは何ですか?」と店主にも漆畑さんにもなく聞くと
「タマイ真壁」という答えが返ってきました。
「タマイ=タマリ=曲がり」という意味でしょうかね。
個性的です。でも、自分の三線としては…判断が付かなかったです。

私がタマイ真壁などを見ているうちに、
漆畑さんと店主に奥の座敷に誘っていただきました。
朝福さんは琉球古典の師範でいらっしゃいます。しかも、
重要無形文化財技能保持者でいらっしゃいます。
その古典の教室に使われているのが、この座敷なのです。

えらい所に来てしまった。と思いました。
照喜名さんとは初対面です。趣味で独学で三線をしている私です。
いきなりの状況の変化に戸惑いました。
いくら漆畑さんが一緒とはいえ、これは緊張しました。
床の間の前に三線が数挺。その中から三線を見せていただきます。
新品とは違う使い込まれた三線。しかも店主愛用の三線です。
「この2挺を結婚式に持っていく。」
と見せていただいたのは、与那城型と真壁型です。
どちらもとても美しい形でした。目を見張ります。

淡々と書いていますが、私は手が震えていました。老化ではありません。
「重要無形文化財保持者の方の愛用の三線」
「触って壊れたらどうしよう」などとチキンな気持ちが顔を出し
雲の上の存在のような方の三線を手にしている自分…
いきなり訪れた信じられない状況に、全く頭が付いていきません。
一方で店主は
「いいさいいさ。三線は弾かなければ、音は出ないんだのに」と笑顔です。
こんなおおらかさが、先ほどまでの緊張を解きほぐしてくれます。

そんな気分の揺れの中でも、音だけは冷静に聞いていました。

突如、与那城を触らせていただいていた私の横で
「ビィーン!(にバリーン!を混ぜた様な…言葉では言い表せませんすみません)」
とすごい音がしました。
ものすごく澄んで、空気を切り裂くようなシャープで華やかな音。
でも、エッジが立ちすぎていない微妙なバランスの素晴らしい音色です。
漆畑さんが弾いていた、店主の真壁です。

「これはすごい!」
「すごいですね!」
と二人で驚きました。
店主は傍らで「うん、そうだろう」、とは言いませんでしたが
とても満足そうな笑みを浮かべていました。

この後も三線を見つつ、三線について漆畑さんと店主が話しをされています。
私は話を聞きながら、分からないことを時折聞いてみたりしていました。

本来ならば、この日は照喜名三味線店はお休みのはずでした。
こんな貴重な体験が出来て、私は大満足。
あまりお邪魔しても…ということで、店主にお礼を言って店を出ました。

店主の真壁について漆畑さんと「すごかったですねぇ」と
話しながら店を出ます。

店の脇に差し掛かったとき…
店の脇から半地下のように伸びるスロープがありました。
ちょうど今お邪魔したお店の真下に部屋があるようです。
「この半地下が作業場なんですが…今日は…」
とスロープを降りながらおそるおそる窓をのぞいてみます。

窓が開いています、人影です。

「あ!」と漆畑さんが声をあげて早足になりました。
びっくりした私は、すぐさまあとについてスロープを降りていきます。

                                              中巻へつづく
by niraikanai76 | 2005-12-11 13:16 | 沖縄新婚旅行(三線探しの旅)