唄三線のある日常。        愛器「二つ星小」          (たーちぶしぐゎー)。         


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三味線店めぐり<番外編>照喜名三味線店 6月21日

私達の新婚旅行も今日と明日で終わりです。
思えば、そのほとんどの時間を妻はホテルで過ごしています。
私は、1人観光と三味線店めぐり。
「夫失格」の文字が…頭をよぎり…ませんでした。

さて、昨日デジカメを照喜名三味線店の作業場に忘れたので
取りに行かなくてはなりません。
デジカメを忘れていなくても、行ったでしょうけど。

今日の天気はまずまずです。
晴れの時間が、長いです。
こんな風景、妻にも見せたかったです。

まず、午前中にそのほかの三味線店を回ります。
「今回は、他で決めてしまいました。
せっかくお話を聞かせていただいたのに、どうもすみません。」
回ったお店全ては無理だったのですが
見て回ったお店何軒かに
こういうことを言って回りました。
行けなかったお店にも、電話でお礼をします。


そうこうするうちに時間はもう午後に。
遅い昼食を、またまた与那原のjefで食べます。
「ゴーヤーバーガー」
もちろん、美味しかったです。

<心震える三線>

佐敷郵便局に到着です。
今日は、訪問する気持ちにも余裕があります。
もう、三味線は決めてしまったのですから。

お店の入り口をのぞいて見ます。
お父さんの朝福さんは不在のようです。
いったんお店を出て、脇のスロープから作業場へ降ります。
降りている途中からかなりの音量で「てぃんさぐぬ花」が
作業場の中から聞こえてきました。

作業場の中には朝栄さんを含めて3人の男性がいます。
昨日はお休みだったのでしょうか。聞けば三味線作りのお弟子さん
のお2人だそうです。

「明日、埼玉へ帰ります。帰る前に、ご挨拶に来ました。」
「あ、明日帰るの。」
「あと…ここにカメラを忘れてしまって。申し訳ないです。」
と作業場の中を見渡します。
「これじゃないですか?」
若い方のお弟子さんが手渡してくださいました。
「あぁ、あった。良かった。すみません。」

「休憩な」
私が来たことで、作業場は休憩になってしまいました。
「気を使っていただかなくてもいいですよ。
挨拶と、カメラのことでお邪魔したんですから」
「いいさ。どうせ休憩時間だし。」
時計を見ると、午後三時でした。

一人のお弟子さんはお若い方で、京都から。
もうお一方は、沖縄の方だそうです。
「この人よ、昨日この三線注文したんだよ」
朝栄さんがお弟子さん2人に木を見せていました。
私も一緒に改めて原木を見てみます。

「この形から、どこを一番最初に削るんですか?」
「ここ」
と朝栄さんの指差す先は、まだ穴の開いていない
糸蔵の部分でした。
「こっちとこっち、交互に削っていくんだよ。
片一方ばかり削ると、バランスが悪くなる。」
とそれぞれ天とチマグを指差して教えてくれました。

せっかくお弟子さんがいるので
私はこんな意地悪な質問を若いお弟子さんにしてみました。
「先生の三味線は、やっぱりすごいですか?」
「オレがいたんじゃぁ、答えにくいよなぁ」と朝栄さんは笑います。

「いや。すごいですよ。自分のは、まだうわべだけです。
形を真似している段階ですから。形は真似していても、まだまだですし。
教えてもらったときに、『ここはこういう理由でこうなる』と教えてくださいます。
私は形を似せるので精一杯なんですけど、いろいろな工夫が三味線の中で
されていてそういう形になっているんだ。と気づくと、とてもすぐにはまねできない
ものだと気づくんです。」

「おめぇも、やり手になってからに」と
朝栄さんもお弟子さんの成長を喜んでおられるようです。

「あ、そうだ。あんた、棹を写真に取っておけばいいんじゃないか?
三線にしたら、もうこの姿は見れんよ」
と朝栄さんが提案してくださいました。

あ、そうか。この姿は、もう見れないんだ。
「はい。そうします。」
そそくさとデジカメを出して、作業台の上でパチリ。
と、この記事に画像添付しようと思ったのですが
容量オーバーで、無理でした。

「この棹と朝栄さんと一緒に撮影したいのですが…」
とお願いして、こちらはお弟子さんに撮影していただきました。

作業場の中でお話をうかがっていたのですが
「コーヒー淹れたから、飲んでって」
とうれしいお誘いをいただいて、お言葉に甘えさせていただきました。
朝栄さん、お弟子さん2人、私。と4人で作業場の外の
テーブルでコーヒーをいただきながら、三線談義です。

「朝栄さんを信じていないわけではないですが…
原木から三味線を作るっていうのは、なんだか不思議な気分ですね。」
私はこんなことを言ってみました。
「初めてでは、不安だろう。
でもよ、心震えるような三線にして送るから心配いらんさ」
頼もしいお言葉です。

話は、ミンサー織りのティーガーに。
沖縄出身のお弟子さん。民謡をどなたかに習われているようです。
朝栄さんも民謡の先生なのですが、どうやら朝栄さんが先生ではないようです。

お弟子さんが話し始めます。
「コンクールの時に。ミンサーのティーガー巻いた三線使ったのよ。
立って歌うコンクールよ。課題曲の最後の歌持ちを弾いてて
『もう、そろそろ終わりだなー』って思ったら、弾いていた三線が
腰からずり落ちて、ガタン。床に落ちたのよ。
コンクールは落選。弾いてる間もズルズルしていたけど。
もう、ミンサーのティーガーは二度と使わんさ」
と笑っていました。

考えてみれば、ティーガーもいろんな種類がありますもんね。

と、そこへ朝栄さんの奥様がいらっしゃいます。
「かりゆし娘、よろしくね」
私に名詞をくださいました。
さっきから、作業場のコンポから流れてきていた音楽は
この「かりゆし娘」の演奏で、今度CDデビューをされるんだとか。
さらに、この三人娘の方々は朝栄さんの民謡のお弟子さんなんだそうです。

三味線を作りながらも、このユニットのライブで
本土にも何度か行かれているそうです。


「あんた…」
と朝栄さんが切り出します。
「一度動いて(捻れて)また元に戻った木があるけど、
見せてあげようか」
と言います。
私が知っているのは
「一度棹がねじれたら、調整しないと元には戻らないはず」
ということです。

でも朝栄さんは
「一度動いて、放置しておいたらまた元に戻っていた。」
と言います。
見るからに普通の棹でした。
尾の方から、トゥーイを見せていただきましたが
言われなければ、捻れていたなどとは気付かないでしょう。

「考えてみたらよ。この木は根っこのほうの木なんだなぁ。
と思ってよ。」と朝栄さんはいいます。
根っこのほう。つまり水分の出入りが激しいということを教えていただきました。
寝かせている間にも、いろんな変化があって勉強になる。
とおっしゃっていました。

普通にお話させていただいているのですが
三線にまつわることのひとつひとつについて
大変一生懸命な職人さんだなぁ。
と感じました。

改めて、自分の注文した三線が出来上がるのが
楽しみになってきます。


まだまだ、いろんなお話を伺いたかったのですが
お弟子さんも含め、三人の方の作業が止まったままです。

名残り惜しいですが、この辺で失礼することにしました。

「私は明日、東京に帰ります。
三線、楽しみにしています。
よろしくお願いします。」
と挨拶しました。

「あんたは三線をやる人なんだから
沖縄に縁のある人なのだ。
うちで三味線も作ることになったし。
また、必ず遊びに来なさいよ」
と言っていただきました。

「はい。必ずまた来ます。
ありがとうございました。」

深々と頭を下げ、お礼を言って作業場を後にします。

自分の納得のいく職人さんに出会えて
三線も注文できて、何もかも無事に済んだのですが
心の中で、どこか三線を探していた昨日までの状態が
懐かしかったですし「もう、三線を探さなくていい」と
わかると、とたんに寂しくもありました。

佐敷郵便局の駐車場は
夕日に照らされて、土の匂いがしていました。
by niraikanai76 | 2005-12-23 21:07 | 沖縄新婚旅行(三線探しの旅)